真夏の方程式

最終更新日時:2013-05-17 18:07:29
東野圭吾




作品紹介


小学生の恭平は、両親の仕事の都合で、夏休みを伯母一家が経営する旅館で過ごすこととなった。
この旅館は美しい海を誇る町、玻璃ヶ浦にあり、この町では折しも海洋資源の発掘を巡って揺れていた。
その関係でこの町を訪れようとしていた湯川は、恭平と偶然電車が一緒となり、その宿に滞在することを決める。
宿泊した翌朝、同じ宿に宿泊していた元警視庁の刑事が変死体で発見される。
一見誤って転落した事故死と思われたこの事件だが、調査を行ってみると次々と意外な事実が。
元警視庁の刑事が、なぜ、この美しい海を誇る町にやって来たのか…

これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とは。


感想


まず、大ざっぱな感想としてはとてもおもしろかったです( ̄ー ̄)
ただ、細部はいろいろおもしろかったのに、肝心なところがちょっと納得いかない、、、というちょっと残念な点も。
例えば、勉強嫌い、特に理科が嫌いな恭平に対して、いろいろ興味深く「知る」ことの楽しさを伝えようとする湯川。
事件とは関係ないですが、ペットボトルロケットの件とか三角形の内角の和とかの話はなかなか楽しませてくれます。
この湯川と少年との交流は本作中の傑作だったと思います。
湯川の科学バカの健在ぶりとあわせて、ホントに湯川に関してはとてもよく描けているな~と感じました。
また、次々と現れる新事実とその解明は、小気味よく進んでいくので退屈しません。
細かいことを気にしなければ、ドロドロの人間関係が明らかになっていくにも関わらず、夏休みの美しい海で起きた事件を様々な情愛を絡めて描いた美しい作品、、と言えるのではないかと思います。


***以降ネタバレあり***

真相はさすがに分かりませんでしたが、かなり序盤で、まさか恭平が殺人の一端を担っているんじゃないだろうな、、、と感じたので、やはり!という感じでした(^_^;
故意の殺人だったら、さすがに救いようがなくて、これじゃ何でもありだな、、、という感想になってしまいますが、そこは上手いこと無意識での共犯に仕立て上げられていましたね。
しかも、理科の実験風の教育でそれを恭平に自ら気付かせるあたりはホントに秀逸だと思いました。

ただ、真相については全てが解明された後でも納得がいかない点が多々あります。
例えば、、、
・川畑成実が殺人を犯してしまった場面、三宅伸子が家族の秘密を握っていることを知ったくらいで、果たして殺人を犯したりするだろうか。。。
ちょっと無理があるのでは?
・さらに、節子は成実が実の子では無いことを確信していたようだが、それなら重治も確信しているはず。
なのに、節子は重治には話していないようだし、それでもおそらく重治が知っているであろうことを確信している。
これはどういうこと??
・重治は実の子ではない成実の殺人をかばうために塚原を殺した?
重治が、成美は実の子ではないことを確信しているのであれば考えにくい。
しかし、実の子だと思っているとは全編を通して考えにくい。
・沢村が死体遺棄を積極的に支持したらしいが、いくら玻璃ヶ浦のイメージを守るためと言ってもやり過ぎでちょっとあり得ない。

というわけで、物理的なトリック、、、煙突を塞いでおそらく押し入れあたりの隙間から一酸化炭素が充満し、、、というのはすぐに予想がつくわけですし、スッキリとしたトリックなのですが、それぞれの動機がどうもシックリこなさすぎなのが残念。
仙波の心情はとてもよく描かれていて非常に共感できただけに、そのレベルでそれぞれの人物の心情が描けていれば、、、と思います。
絵の件なんて非常にシックリ来ました。

また、一番残念な点は、結局被害者となった塚原がまったく浮かばれないこと。
この作品中で一番の人格者と言って良いのに、結局川畑家に不幸をもたらす人間と勘違いされて殺されてしまい、その結果一家は離散、、、という最悪の結果。
しかも、恭平も犯罪の一端を担うことになるし。
恭平が今後どう生きていくか、、を考えさせられる終わりにはなっていますが、とてもハッピーエンドとは言えず、作品自体は美しい印象なのに、非常に読後感が悪いのがホントに残念でした。

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