永遠の0

最終更新日時:2014-03-04 14:57:47
読書の秋



終戦から60年。
健太郎は今の祖父が実の祖父ではないことを知る。
実の祖父・宮部は戦争で命を落としたようだが、その生涯は謎に包まれていた。
健太郎は宮部の生涯を調べ始めたが、、、天才だが臆病者という人物像が浮かんできた。
当時の時代背景にして、死ぬことに対して極端に臆病だった宮部が、なぜ特攻で命を落としたのか。。。


感想


いわゆる近代現代を描いた長編小説はおそらく初めて読んだと思いますが、とてもおもしろかったです。
この時代についてよく知らないので、事実として正しいのか否かは判断できませんが、当時の時代背景がよく伝わり、戦闘シーンも非常によく書かれていたと思います。
近現代の歴史小説として傑作だと思います。
そして、何より、実質主人公にあたる宮部の思いが非常に伝わってきて、ホントに涙無しには読めません。
私は終盤よりも、むしろ中盤くらいの方が感動的でした。
文章の方は上手だとは思いませんでしたが、非常に読みやすく、これだけの分量の小説でしたがサクサクと読めました。
作者の百田 尚樹は作家としては、これがデビュー作なのですね。
放送作家をしていたとはいえ、デビュー作がこれだけの傑作とはちょっと驚きです。

ちなみに、私は映画を先に観てから小説を読んだのですが、やはり小説の方が描写が細かく、おもしろいと感じました。
映画は映画で良い出来だったと思うのですが、分かりにくい箇所が若干あったので、小説を読んでから映画を観た方が良かったですね(^_^;


***以降ネタバレあり***

ホントに傑作と言っていいこの作品ですが、個人的にはこの結末は非常に残念!
絶対に死なないと言っていた宮部が、何故自殺とも言える特攻に志願したのか。
これはホントに大きな謎で、納得させるためには非常に明確な理由が必要だと思うのですが、結局は、周りの人間が自分の身代わりのように死んでいってしまうのが耐えられないから?という、私からしたらかなりつまらない理由。
宮部が死んだことによって救われる人間がいるわけでもないし、ホントに無駄死にとしか言いようがない。
宮部には初志貫徹して、戦後まで生き残って欲しかった。。。。
が、そうすると、まさかの大どんでん返しは無いことになり、話としてはつまらなくなりますな(^_^;

あとは、マスコミ(朝日新聞?)は掌を返すがごとくどーのこーのとか、軍の上層部の戦略や思考が酷い等々、この小説ではスポット的に作者なりの主張が見え隠れするのですが、この辺はたしかに一つの命題としてはおもしろいのですが、あれもこれも詰め込みすぎた、、、という感は否めません。
あまりに盛りだくさんで、焦点がぼけてしまうのでは?と思いますね。
個人的には、宮部の生に対する執着(なんとしても約束を守り、妻と子を守る)のみに焦点をあてて欲しかったな~と思いました。

お問い合わせは 掲示板 にて。