ゲームの名は誘拐
東野圭吾
あらすじ:
主人公の佐久間が心血を注いだプロジェクトが取引先の重役葛城に白紙に戻された。なんとなく葛城邸に足が向いた佐久間はそこで家出をした葛城の娘樹理と出会う。プロジェクトを潰した葛城に一矢報いたい佐久間は、樹理と組んで狂言誘拐というゲームの勝負を挑む。ゲームに自信を持つ佐久間は知略の限りを尽くしてゲームの達人を自負する葛城から身代金三億円の奪取を狙うがそこには意外な結末が。。。
感想:
この作品も東野圭吾らしく、何か事件が起きてそれを解決していく、、、という類の普通のミステリーではないです。
常に犯人である佐久間の視点からのみ書かれており、それ以外の人物からの視点での描写は一切なし。
従って、謎を解いていく過程の描写ではなく、むしろ謎を作り出す過程の描写となっています。これは面白い。
佐久間と葛城の頭脳のぶつかり合いは非常に読み応えがあります。
そして概ね佐久間の予定通りに事が進みますが、それとは関係ない小さな出来事がいくつか起きます。
これが後々の重大な伏線になっており、その全てが最終的に解決するのが非常に気持ちよいです。
手軽に読める作品ですし、自信を持っておすすめできる一作ですね。
**以下ネタバレ有り**
実はこの作品、読み進めていくうちに、樹理は偽物で本物は既に死んでるであろうこと、実は偽物の樹理と葛城が結託しているであろうこと、葛城がなぜ大人しく佐久間に引っかかったように動いているのか、さらに最後のオチまでなんとなく分かってしまいました。
普通、ミステリー系で途中の段階でそれ以降の流れやオチが分かってしまうと興ざめしてしまうものですが、この作品の場合はむしろ心地よい感触すらありました。
それは、著者の伏線の張り方がフェアだからだと思います。
各所にちりばめられた伏線をたどると真実が見えてくる、、そういった感覚が味わえました。
これは快感ですね。
ただあえて苦言を呈するのであれば、ものすごく切れる人物(天才、達人ともいえる)として描かれている佐久間が結果的に女子高生にしてやられるわけで、そんなアホな、、、という感は否めません。
ま、実は出来る人間っていってもそんなもんなのかもしれないですが。