ガリレオの苦悩

最終更新日時:2011-10-24 17:06:37
東野圭吾




あらすじ


以下の短編からなっています。

・第一章・落下る(おちる)
・第二章・操縦る(あやつる)
・第三章・密室る(とじる)
・第四章・指標す(しめす)
・第五章・攪乱す(みだす)

落下る(おちる)


マンションから江島千夏が転落死する事件が発生。
被害者に鍋で殴られた痕跡があったことから他殺の可能性が浮上。
被害者の先輩である岡崎光也が名乗り出て、被害者宅に訪れたことやマンションを出て行った後被害者が転落する場面を目撃し、その場でピザ屋の店員にぶつかったことを供述する。
捜査を行っていた薫は草薙に頼み込み、以前捜査協力をしていた湯川に協力を仰ぐことに。
しかし、湯川は容疑者Xの献身以来、捜査に協力する意志をなくしていた。

操縦る(あやつる)


かつて「メタルの魔術師」と呼ばれた元帝都大学助教授の友永幸正は、久々にかつての教え子たちと自宅で酒を飲んでいた。
友永が席を外し、教え子たちが話をしていると、離れ家から炎が上がり始める。
離れ家に住んでいたのは友永の息子である邦宏。
邦宏は火事による焼死ではなく、刺殺であることが判明。
友永の教え子の湯川も参加予定だったが、事件後に遅れて到着。
事件に巻き込まれた湯川が真相を解明する。

密室る(とじる)


ペンションを経営する藤村は、ある事件に関わる謎の解明を友人の湯川は依頼する。
その謎は藤村のペンションの客がガードレール下で転落死したことが発端。
事件の前、夕食頃に藤村が被害者を呼んだところ応答が無く、2度目に呼んだときには被害者がいる気配がした。
この間、部屋は密室であることに藤村は気にかかっていた。
湯川は謎を解明すべく調査を始めるが、藤村は必要以上に事件の状況を調査する湯川を嫌い、調査を断ってしまう。

指標す(しめす)


野平加世子が何者かに殺され、さらにその家から金の地金が盗まれる事件が発生。
その日に被害者宅を訪ねた真瀬貴美子に嫌疑が掛かるものの証拠が見つからず捜査は難航する。
張り込みをしていた薫は貴美子の娘・葉月が謎の行動をしながら不法投棄が行われている場所まで後をつけ、ここで重要な証拠を発見する。
葉月はダウジングをすることで証拠の場所を突き止めた証言。
葉月の証言の対応に困った薫は湯川に相談を持ちかける。

攪乱す(みだす)


警視庁の元へ届いた一通の手紙。
悪魔の手と名乗るその手紙の差出人は自分の意思で自在に人を葬ることができるといい、湯川を挑発する内容だった。
本当の目的が分からないまま、悪魔の手は犯行予告による殺人をはじめる。


感想


今までのガリレオシリーズといえば、科学的な手法によるトリックを物理学者である湯川があばいていく、、、といった内容でしたが、今回の短編集ではそれに加えて、人の心を読む、、ことに重点がおかれています。
もちろん、科学的な手法によるトリックも健在。
これまでのガリレオシリーズは、これだけ科学的手法を前面に出すトリックは珍しい、、、というレベル、いわば変わり種的な作品と個人的には思っていましたが、今回の短編集はそれだけではなくなったので、非常に内容に厚みが出たと思います。
今までのガリレオシリーズの短編集では秀逸ですね。

**以下ネタバレ有り**

ネタバレしつつ、それぞれの作品の感想を書いておきます。

落下る(おちる)


率直に言って、この作品は東野圭吾にしては少々いまいちだったかも。。。。
薫を登場させるだけの作品と見ればいいのかもしれないが。
まず、最初に実験したトリック。
明らかに無理がある。
まさか、これが真相じゃないよな、、、、と思って読み進めると案の定違ったのだが、しかし、最後のオチからすると、なんで都合良く掃除機と鍋があったかな~という話になる。
しかもフタ付きw
しかし、薫を登場させ、女性ということも含めて特長を紹介することには成功していますな。
これで草薙刑事の影が相当薄くなる(^_^;

操縦る(あやつる)


これはおもしろかった。
電話の位置とか池の位置とか、ちょっとご都合主義的なところはあるが、最後の真相解明ではなるほど!と満足。
途中はホントにやりきれない思いになるが、最後の最後ですがすがしい気分にさせてくれる非常に素晴らしい作品ですね。
短編であるのがもったいないくらい(笑)

密室る(とじる)


これもなるほど~と思わせる作品。
ただ、トリックに使われたブツは本当にそんなにそっくりに作れるのかな。。。
難しい話もなく、これぞ短編!って感じですね。

指標す(しめす)


ダウジングというある意味非科学的な要素をどう湯川が料理するか、、、が注目でしたが、いや、ホントに見事に解明してくれました。
ダウジング自体は非科学的とはいえ明確に否定されているわけでもないので、あえてダウジング自体に白黒はつけないのがミソですね。
それでいて、葉月の行動はしっかりと説明。素晴らしいですな。
しかし、犬の死骸の場所を葉月が推測できた、、、というのはちょっと無理があるよな~
だいたい猫をひいて死骸を捨てたってだけでかなりレアケースだし、それと同じ場所に普通捨てるか!?
特に今回は殺人事件の重要な物証となるのに。。。
全体的にはおもしろかったので、ちょっと残念。

攪乱す(みだす)


これ、おそらくトリックはそんなことだろう、、、と思った(笑)
しかし、トリック以外の内容はすごくおもしろいですな。
殺人にこだわっている点から失敗ケースを探し出すとか、いわゆるおとり捜査をしかけるとか。
そして、何より犯人の頭がいいところが作品をおもしろくさせているのだと思う。
乱数表をあらかじめ作っておいたりとか、予告の方法とかね。
警察が困っている様子の描写も秀逸だし、これも短編としてはちょっともったいない作品(笑)
しかし、このままだと湯川と薫がくっつくのかな?www

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