カッコウの卵は誰のもの

最終更新日時:2013-08-23 19:56:29
東野圭吾




作品紹介


スキーの元日本代表・緋田宏昌には、娘・風美がいる。
風美もスキーヤーとして活躍しており、父と娘は二代でのトップスキーヤーを目指していた。
一方、風美の母親・智代は、風美が2歳になる前に自殺していた。
緋田はある時、智代の遺品から流産の事実を知り、風美の出生に謎があることを知る。
風美がめざましく活躍するにつれて、緋田父子の遺伝子についてスポーツ医学的研究の要請が来るが、秘密を知られてはいけない緋田は、要請をかたくなに断り続ける。
そんな中、風美の競技出場を妨害する脅迫状が届き、謎のバス爆破事故が発生する。


感想


東野圭吾らしく、サクッと読みやすい作品でした。
スポーツを得意としている人間に存在する遺伝子パターンがあるという話はなかなか興味深いし、おもしろい。
これが、どうミステリーに結びつくのだろう、、、と思って読み進めていったのですが、そういった意味ではなるほど~という結果に終わり、おもしろかったです。
ただ、細かい点ではいろいろ不可思議な点もあったりして、率直に言って東野圭吾の作品の中では平凡な作品に終わってしまっているのではないかと思います。
遺伝子パターンに着目した点はとてもおもしろいと思ったので、ちょっと残念。

***以降ネタバレあり***

冒頭で書いたように、全般的には読みやすくておもしろい作品だと思いましたが、いろいろ不満な点がありました。
まずは、東野圭吾の最大の欠点ともいえる、動機の設定ですね。
この作品も残念ながら動機がイマイチで、畑中弘恵が新生児を誘拐したりとか、自殺したりとしましたが、それくらいのことでするか!?という感じがします。
智代の自殺も同じく。
ちょっとストーリー的に無理があるよな~という感じですね。
同じ無理があるにしても、風美のスキーヤーとしての素質が父の緋田宏昌ではなく、畑中弘恵の遺伝子から来ている、、、という話は小説として受け入れられるのですが。
あとは、もちろん真犯人。
あまりに影が薄い存在だっただけに、意外性があったわりにはインパクトが無さ過ぎて、むしろ拍子抜けという感じでした。
辻褄は確かに合っているのですが、やはりここも、それくらいのことでここまでやるか~という感じ。

また、真犯人から実行犯への連絡はメールだったと書かれていますが、どうやってメールの連絡先を入手したのか?とか、緻密さに欠けている感が否めません。
ま、サクッと読める感重視ならそんなことは気にしなくても良いのかも知れませんが、他の作品ではわりとキチッと書かれているので、やはり気になりますね。
逆に、緋田宏昌の苦悩の様子は非常に良く描かれていて、とても引き込まれました。
こういった心理描写については、ホント素晴らしいと思います。

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