幻夜

最終更新日時:2010-07-29 20:31:51
東野圭吾

あらすじ


阪神淡路大震災の直後に出会った男女。
男が犯した殺人を目撃した女は彼を利用して野心を実現していく。
最初は彼女の意のままに動く男も徐々に疑念を抱く。
一人の刑事も疑念を持つ女には恐るべき秘密が。。。

感想


面白かったです。傑作と言って良いでしょう。
かなり分厚い本ですが、「あれ?もう終わりなの?」という感じでした。
ただ、最後の結末がなんとも。。。どういうことなんでしょう?
東野圭吾の作品にはままありますが、この作品もミステリーというよりも人間模様を描いた作品ですね。

**以下ネタバレ有り**

これ単体でももちろん楽しめるのだが実はあの白夜行の続編ともいえる作品になっているのが面白い。
続編と言ってもあからさまに続編になっているわけではない。
登場人物は一人として同じ**名前**の人間は出てこないし。
ただ、各所で白夜行との関連を示す記述があり、実は新海美冬が唐沢雪穂であることをほのめかしている。
これに気付いたときにはちょっと衝撃的だった。
最初の人物描写の時にやけに似た表現だな~と感じたが同じ作者の作品だし、とあまり気にしなかったがスカーレットが出てきて「ホワイトナイト」で確信。
日本語で白夜。そのままじゃん(/_\;)
それ以外でもコンピューター関連に長けていたりとか、店員として優秀だったりとか、人の心のつかみ方とかかなり各所にちりばめられている。
幻夜を読むなら白夜行の続編と知らずに読むべきですな。
そして、できれば白夜行を読んでから幻夜を読むべき。

とはいえ、結論から言うと幻夜は白夜行には遠く及ばないと思う。
白夜行の素晴らしいところは、完璧なパートナーであったであろう雪穂と亮二の実際のやりとりが一切描かれていないところにあると思う。
実際の描写は無くとも回りの状況の描写だけでほのめかす。これがやはり素晴らしかった。
が、幻夜は実際のやりとりが事細かく描かれている。
これは正直少々興ざめ。
しかも実際のやりとりが雪穂が意のままに雅也を動かしているというだけのもので、まさに悪魔としか言いようがない。
こりゃホントに救いようがない。
うがった見方をすると、亮二も雅也のように意のままに動かされていたのでは?とさえ思ってしまう。
それと、雪穂以外の白夜行の登場人物が出てこないのもちょっと不自然。
例えば、笹垣とか篠原とか高宮とか。
だいたい結婚してたはずなのにいつの間に独り身になったんだ?という疑問もあるし。
あと気になったのは雪穂が美の追究が目的だと言っていること。
いつの間にそんなの追究しだしたんだ!?
白夜行の時は明らかに金の亡者だったはずだが。
整形したのは過去の自分を隠すためという理由があるので十分納得がいくのだが、華屋の社長と結婚後も整形にこだわってたのは意味不明。
いつの間にそんな価値観になったのだろう。
ま、作者は明確に白夜行の続編だと言っているわけではないので文句を言ってもしょうがないんだけどね。

最後に。
この流れならさらなる続編も書くことは可能なはず。期待。

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